理事長所信

「未来創出~地域の受容力とレジリエンスの向上~」

<はじめに>

 子どもたちが将来の夢を思い描くとき、その未来は明るく希望に満ち溢れた世界を想像していることでしょう。そしてその想像力は、幾多の困難や挫折を乗り越え夢を実現させる原動力となることでしょう。夢とは希望にあふれた未来を創造することであり、誰しもが持つことのできる大きな力です。我々青年会議所が目指す明るい豊かな社会とは、一人ひとりが大きな夢を持ち快活に暮らせる社会だと私は考えます。予測ができないようなことが起こりうる現状において、多くの人が、先行きが見えないと不安を抱きやすい今、青年経済人が集う組織として、多くの仲間の知恵と力を合わせ、情熱をもって行動し新たな発想で地域に夢を魅せる運動を展開してまいりましょう。そして明るい豊かな社会の実現に向けた未来を創出してまいりましょう。
昨年度より世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症の影響は、世界の人々の行動を制約し、私たちの生活様式も急激に大きく変化することを余儀なくされました。人が集うことやイベントなどの機会の減少は、地域の経済に大きな損失を与えるだけでなく、市民同士の関係の希薄化や経済格差に拍車をかける懸念となりました。このような災禍の中、市民が不安や恐怖に怯え、それぞれが助かりたい思いから利己的に行動を取ってしまっていては、結果として生活する環境を破壊しかねません。いまこそ我々公益社団法人草加青年会議所が地域に対して当事者意識を持ち、利他の精神を持って行動を起こす時です。利他=自己犠牲ではなく、自分が、家族が、友人が、住むこの地域に対して、自分たちのまちは自分たちで創る意識、己の利を守るために公に益をもたらす行動を起こす「公益利己」という新たな概念を持ち地域に発信しましょう。青年経済人が集う組織である我々が率先して行動を起こし、前を歩むその背中で市民が未来に希望を持てる道へと導いていきましょう。そして、市民の一人ひとりが、今の環境は見えない誰かの関りがあって成り立っていることに感謝の意識を持ち、支え合うことの大事さを理解し受容力があふれレジリエンスの高い地域を創造していきましょう。

<偏らない柔軟な思考の形成>

 『気に入らぬ 風もあろうに 柳かな(仙厓和尚)』
しなやかで柔軟性のある柳の木は、東からの風が吹けば西へとなびき、西からの風が吹けば東へとなびく。流されるのではなく、その時の状況に合わせて柔軟に受け入れます。強い風や逆風の中でも折れることなく、必死に耐え踏ん張り、やがて嵐が過ぎいつもの日常に戻り柳の木は成長を続けます。今、我々に求められていることは、偏った意見を持ち物事の一側面から論を唱え行動するのではなく、仏教における「中道」の概念に近しく、偏らず常に物事の両側面をみることで、意見の対立を超えた両側面が混在する新たな価値を創造する思考を持つことです。地域に例えば、現状の安心安全のための国の統一基準によるところの新しい生活様式は、命を守る行動として限りなく正解に近いと言えるかもしれません。しかしそれは全体に対しての基準であり、それぞれの地域の特性に必ずしも合っているとは言い切れません。かといって、地域の特性のみに意識を置き国の定める基準から大きく逸脱することはありえません。「国の基準」と「地域の特性」のどちらかを選択するのではなく、両側面をあらゆる角度から俯瞰してみつめ、両立していくという新たな道を模索し常に思考し続ける意識の形成が必要となります。

<それぞれの個性を尊重し多様性に富む地域へ>

 我々が住み暮らす日本という国は、多くの物に溢れており物質的に豊かな国といえることは多くの人々の共通認識であります。しかし豊かで幸福かとなると疑問を持つ人々が多いのではないでしょうか。私はここに精神的豊かさが不足していることが起因となっていると考えます。これは個性や主体性が求められている学校や現代社会の中において「生きづらさ」や「息苦しさ」を感じたりしても「空気を読む」という言葉で片付けられてしまう集団主義的な考え方が日本人としての意識下に根深くあるからではないでしょうか。集団主義的な考え方が否かというとそうではありません。戦後の復興の際にも災害の多い我が国での復興の際にも、強い連帯感をもって目的に向かい力を合わせることは大きな力だと考えます。しかし、その考え方に偏り平時にも集団の秩序のみを優先し右向け右を強要する雰囲気となれば、すべての個性を否定する考え方に転嫁されてしまいます。その集団心理により押しつぶされた個性が反発をし、間違った形の自己主張として、相手の個性を否定する形での表現となり、いじめの問題やインターネットでの隠れた誹謗中傷に表れていると考えます。ここで取り上げている否定とは、反対意見やNOという意見の対立を抑えることでなく、集団と個人、連帯と自立、どちらにも主張があることを考え、偏らずにバランスの取れた思考をもつ意識として相手を思いやる心が必要だと考えます。個として価値観が違うと反発し合うのではなく、まずは思いやりの心を持ち相手の価値観を受け入れることが必要です。そして互いの主張を理解したうえで、それぞれの個性が共生できる関係を築き、多様性あふれる社会へと繋げていきます。多様性に富むことは、幅広く性質の異なる群が多く存在することであり、それは変化に対しての対応力となりレジリエンスの高い強靭な地域として発展への原動力となります。集団の利益と発展のためには個性を尊重し多様性あふれる地域であること。そのために受容力を育むための運動展開が必要になります。

<歴史を受け止め時代に則した体制変革>

 「明るい豊かな社会の実現」を理想として、公益社団法人草加青年会議所は1968年9月15日に創立されました。そして翌年の3月30日に全国で395番目の青年会議所として産声を上げました。以来400名近くの先輩諸兄姉が地域への責任感をもって愛する地域のために運動を展開してまいりました。創始からの意志を受け継ぎ、それぞれの時代背景においての困難な問題に対し、正面から向き合い青年として率先して行動してきたからこその成果があり、そして地域からの確かな信頼を築き上げてこられ、今日の青年会議所があります。今、我々が当たり前のように活動できることは自分の行動の結果だけでなく、先人たちの努力の賜物であります。故に感謝と敬意を常にもつことを忘れずに活動を続けていく必要があります。しかし今、かつてない災禍に見舞われ、我々は活動を継続していくことに対して危機的な状況にあります。この困難な状況下においては、継承してきた多くの体制や事業に対して違う形を模索していく必要があります。そのためにまずは先輩諸兄姉より紡がれてきた意志と時代を先駆けてきた運動の経験と知識を正しく受け継ぐ必要があります。52年にわたる歴史を紐解き、その重さを受け止めたうえで、予想が困難な未来に向けて持続可能な組織として常に進化をしていきましょう。

<結びに>

青年会議所は学び舎です。メンバーそれぞれが地域、仕事、家庭、友人など今の環境により良い変化を与えるものを求め集っています。20~40歳までの限られた時間の中で、要な経験や知識を得るためには率先して行動することが求められます。そして活動をする際に会社や家族の大きな理解が必要となります。ゆえに自らが成長した先で、結果もってして返すことが求められます。
① やると決める。
② やる。
限りある時間を有意義に使うために、まずシンプルに決断することで、意識は次に如何にやるかのフェーズに移ります。目まぐるしく変化する社会情勢の中で、悩む時間は多くは取れません。自分の定めた目的に対して、行動をすると決める前からやったらどうなるかを悩む必要はありません。結果は決断した先にしかないのです。
しかし、人は一人では迷います。だからこそ同じ意識を持ち集まった同志達と互いに支え合い尊重し合い、一人では挫けそうになる時や折れそうになる時に寄り添い切磋琢磨して成長し乗り越えましょう。誰もが苦しい今だからこそ、若い力と勇気をもって率先して決断し行動をする。そして達成した先にある至上の喜びと自己成長を肌で感じ、この逆境下に活路を見出す力を育んでほしいと考えます。